次位滅入るGmail

過去の栄光

本庄一、2度目のサヨナラ勝ち 浦和実勝ち上がる

 埼玉大会は21日、3球場で4回戦8試合があり、16強が出そろった。昨夏の覇者・本庄一はノーシードながら、3回戦に続きサヨナラ勝ち。シード校の浦和実、大宮東、浦和学院鷲宮も駒を進めた。市立川越、埼玉栄は姿を消した。22日は3球場で5回戦8試合を行い、8強が決まる。

■亡き後輩へ気迫の投球 市立川越・大岩根匠投手

本庄一3―2市立川越 延長10回)

 左腕に力が入らなかった。本庄一と同点で迎えた10回裏2死二塁、市立川越の投手・大岩根匠君(3年)は指先からボールが離れた瞬間、思った。「まずい」。その後のことはあまり覚えていない。

 昨夏の大会では投手陣の一角を占めた。新チームでは柱。そのころ、腰の痛みが気になり始めていた。春の大会の終わりには、慢性的にひじがだるくなり、違和感が消えなかった。

 4月末には、仲間の権藤光君(2年)ががんで亡くなった。よくじゃれあっていた後輩。野球に集中できなくなりそうだった。

 告別式で、病床の権藤君が、「野球部のためにできることは何でもしたい」と両親に話していたのを知った。「甲子園に行くまで、天国から見守ってほしい」。悲しみや痛みに耐えて練習に励んだ。6月に入ってもまともに投げられなかったが、新井清司監督は背番号「1」を変えなかった。

 8回、今大会で初めてマウンドに立った。約1カ月間、ほとんど投げていなかった。三塁側スタンドから聞こえる仲間の声を背中に受けながら、同点の緊迫した場面に立ち向かった。「点はやらない。絶対抑える」。気力で8、9回を切り抜けた。

 最後の一球。外角の直球を要求されたが、痛くて投げられそうになかった。首を横に振った。内角のカットボールにうなずいた。やっとの思いで投げた球はすっぽ抜けた。ボールは快音を響かせ、三塁線を転がっていった。サヨナラの走者が生還するのを前にして、ひざから崩れ落ちた。

 「ごんちゃん(権藤君)の思いに応えられなかった」。試合後、大岩根君は仲間に謝り続けた。今村健悟主将(3年)はうなだれるエースに「ありがとう」と声をかけ、「エースで負けたんだから仕方ない」と慰めた。

 「ごんちゃんを甲子園に連れて行ってくれ」。傷だらけのエースは悲願を後輩に託した。